要件から逆算する データ移行で最初に決めること
データ移行のサービス選定は「サービス名を覚える」より先に、要件を言語化できるかで勝負が決まります。SAA-C03でも、移行系は単体暗記より「この状況ならどの手段が自然か」という読み取りが問われやすい分野です。
まずは次の5点だけ、順に決めていきます。
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どこからどこへ移すのか
- オンプレミス → Amazon S3 / Amazon EFS / Amazon FSx など
- AWS → AWS(リージョン間、アカウント間)
- エッジ環境や閉域環境 → AWS
DataSyncはAWSストレージ間・オンプレとAWS間の転送を担うオンライン移行サービスです。
Storage Gatewayはオンプレ側にゲートウェイを置き、クラウド側ストレージを“ローカルのように”使う統合サービスです。
Snowファミリーはネットワークではなく物理デバイス搬送で大容量を移す選択肢です。
一度きりか 継続か
- 一度きりの移行(初回の引っ越し)
- 定期的な同期(毎日・毎週)
- ほぼ常時の同期(DRや段階移行)
ここが最重要です。一度きりならSnowも候補、継続ならオンライン型が基本になりやすいです。
回線は十分か
- 帯域が細い、安定しない
- 閉域でインターネットに出せない
- 送れるが転送時間が現実的でない
回線が厳しいなら、Snowの「物理搬送」が現実解になることがあります。
アプリが求める“見え方”は何か
- ファイル共有として見せたい(SMB/NFS)
- ブロックとして見せたい(iSCSI)
- 既存のテープ運用を残したい(VTL)
ここがStorage Gatewayの出番です。Storage Gatewayはファイル、ボリューム、テープの形で提供できます。
移行後もオンプレとつなぎ続けるか
- 移行後はオンプレを縮退して、基本はクラウド運用
- 移行後もオンプレ運用が主で、クラウドはバックアップやアーカイブ中心
“移行”なのか“ハイブリッド統合”なのかで、選ぶサービスが分かれます。
AWS DataSyncが向くケース 向かないケース
DataSyncは、オンプレミスやAWS上のストレージから、AWSストレージへ(またはその逆へ)安全・高速にデータを転送するサービスです。
DataSyncが向くケース
大容量をオンラインで素早く移したい
たとえば「オンプレのNFSにある数十TBの設計データを、Amazon S3やAmazon EFSへ移す」といったケースです。DataSyncはファイル/オブジェクトデータの転送にフォーカスしているので、移行作業をタスクとして管理しやすいのが強みです。
初回フル移行+差分同期をしたい
段階移行では「まず全量を移す → 切替直前に差分を同期する」が定番ですが、DataSyncは増分転送の文脈で語られることが多く、移行計画に組み込みやすいです。
AWS内やリージョン間のデータ移動を定期運用したい
バックアップ、DR、データ配布などで、定期的な転送タスクを運用に載せたいときもDataSyncは候補になります(「移行」だけで終わらない)。
DataSyncが向かないケース
“ローカルの共有フォルダとして使い続けたい”
DataSyncは「転送する」サービスで、オンプレのアプリから見たストレージ提供の形を変えるものではありません。オンプレからSMB/NFSで“いつも通り”触らせたいなら、次で扱うStorage Gatewayが自然です。
回線が不安定で、オンライン移行が現実的ではない
転送に日数~週単位が見えてくるなら、Snowファミリーを検討した方がトータルで早いことがあります。
ブロック移行やテープ運用の置き換えが主目的
iSCSIや仮想テープライブラリを“提供する”のはStorage Gatewayの領域です。
AWS Storage Gatewayが向くケース 向かないケース
Storage Gatewayは、オンプレ側にソフトウェア/ハードウェアアプライアンスとしてゲートウェイを置き、AWSストレージとシームレスに統合するサービスです。
Storage Gatewayの3系統をまず押さえる
- ファイルゲートウェイ:S3 File Gateway / FSx File Gateway(SMB/NFSで提供)
- ボリュームゲートウェイ:iSCSIとしてマウントできるボリュームを提供
- テープゲートウェイ:仮想テープとしてバックアップをS3 Glacier系へアーカイブ
Storage Gatewayが向くケース
オンプレのアプリは変えずに、クラウド側へ保存先を寄せたい
「アプリはSMB共有に書き込む前提。だけど実体はS3に置いて耐久性とコストを取りたい」──こういう“見え方を変えない”要件が強いときに効きます。
既存のバックアップ運用がテープ前提
物理テープの運用をいきなり捨てられない現場は多いです。テープゲートウェイは仮想テープの形でクラウドへ逃がせるので、運用の段差を小さくできます。
オンプレとクラウドを“つなぎ続ける”前提
移行というより、ハイブリッド統合・段階的モダナイズの色が強いならStorage Gatewayが候補になりやすいです。
Storage Gatewayが向かないケース
目的が「一度きりの引っ越し」で、統合運用は不要
この場合はDataSyncの方がシンプルです。移行後にゲートウェイを運用し続ける理由が薄いなら、サービスの常設は負担になります。
回線が厳しく、そもそもクラウド側へ安定して到達できない
ゲートウェイはクラウドと通信して価値が出るので、ネットワーク制約が強すぎる場合はSnowなど物理搬送を含めて考えた方が安全です。
AWS Snowファミリーが向くケース 向かないケース
Snowファミリーは、AWSが管理する物理デバイスを使って、エクサバイト規模までのデータを物理的に移送できるサービス群です。Snowcone、Snowball Edge、Snowmobileで構成されます。
Snowファミリーが向くケース
ネットワーク転送だと「いつ終わるか分からない」
回線が細い、拠点が多い、夜間しか流せない、そもそも帯域が確保できない。こういう条件ではオンライン移行の計画が破綻しがちです。Snowball Edgeは「インターネットより速い速度で運べる」文脈で説明され、搬送で一気に進める発想になります。
現場や辺境環境で、安定した接続が期待できない
Snowファミリーは厳しい環境や一貫したネットワーク接続が利用できない場所でのオペレーションも想定されています。
データ移行だけでなく、現地での前処理や一時的な計算も必要
Snowball Edgeはストレージだけでなくコンピューティング機能も持つデバイスとして説明されています。単純な搬送に留まらず、エッジ側で処理した上でAWSに持ち込む設計も視野に入ります。
Snowファミリーが向かないケース
小〜中規模で、オンライン移行が現実的に回る
数TB程度で、回線が確保できるなら、DataSyncや他のオンライン手段の方が運用が軽いことが多いです(物理手配のオーバーヘッドが勝つ)。
継続同期や日次バックアップが主目的
Snowは“継続的に回す”より、まとまったデータを物理搬送する発想が中心です。継続運用ならDataSyncやStorage Gatewayが候補になりやすいです。
迷ったときの決定フロー 試験でも実務でもブレない整理
最後に、SAA-C03の設計問題でも実務でも使える、判断の順番をまとめます。ここが腹落ちすると、細かい仕様を覚える前でも選択肢をかなり潰せます。
まずは移行の“型”を決める
- オンラインで転送して完了させる → DataSyncが中心
- オンプレからクラウドをストレージとして使い続ける → Storage Gatewayが中心
- ネットワークが前提にならない移行 → Snowファミリーが中心
判断を1枚に落とす早見表
| 迷いどころ | DataSync | Storage Gateway | Snowファミリー |
|---|---|---|---|
| 目的 | データを移す・同期する | アプリから見た“保存先”を統合する | 物理搬送で大容量を移す |
| 継続運用 | しやすい | しやすい | 基本は一括中心 |
| アプリ改修 | ほぼ不要だが“転送”前提 | 最小化しやすい | データ取り回しの手順設計が必要 |
| 回線制約 | 影響を受ける | 影響を受ける | 影響を受けにくい |
| 代表例 | オンプレNFS→S3/EFS | SMB共有のままS3へ | 数十TB〜PBの一括搬送 |
具体例でイメージを固める
例1 オンプレの共有サーバーをS3へ段階移行したい
- 初回の引っ越しはDataSyncで全量移行
- しばらくは差分同期で切替リスクを下げる
- もしオンプレ側のアプリが“共有フォルダ前提”で残るなら、Storage Gatewayで共有提供を継続
このように、単体選びではなく組み合わせになることもあります(ただし、要件が薄いのに複雑化しないのがコツ)。
例2 工場や建設現場で回線が細く、画像データが増え続ける
- 日次同期をオンラインで回せないなら、Snowファミリーで定期的に回収して持ち込む案が現実的
- 逆に、回線が“夜間だけでも安定して確保できる”なら、DataSyncでスケジュール転送に寄せた方が運用は軽い
例3 既存バックアップがテープ運用で、クラウドへ移したい
- テープゲートウェイで仮想テープとして運用を維持しつつ、S3 Glacier系にアーカイブする流れが理解しやすい
SAA-C03の学習としての押さえ方
- サービスの暗記より、「オンライン転送」「ハイブリッド統合」「物理搬送」の設計思想を分けて覚える
- 問題文に出る制約(回線、ダウンタイム、既存プロトコル、バックアップ方式)を見たら、まず“型”に当てはめる
- その上で、DataSync・Storage Gateway・Snowファミリーの説明文が自然に読める状態を作る
体系的に整理したい場合は、UdemyにもSAA-C03向けにハンズオンでストレージと移行を横断して学べる講座がいくつかあります。サービス単体ではなく、要件から選ぶ練習をしたい人には相性が良いはずです。
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まとめ
AWSのデータ移行は、DataSync・Storage Gateway・Snowファミリーの名前を並べて覚えるより、要件から“型”を選ぶほうが迷いません。DataSyncはオンラインで移す・同期する役、Storage Gatewayはオンプレのアプリから見たストレージをクラウドと統合する役、Snowファミリーは回線に依存しない物理搬送の役割です。
SAA-C03の観点でも、回線制約や既存運用の前提を読み取り、どの型が自然かを判断できると選択肢が一気に絞れます。最後は「一度きりか、継続か」「オンラインか、物理か」「見え方を変える必要があるか」という3つの問いに戻って、ブレない選定をしていきましょう。

